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今日ですべてがむくわれる

泣ける漫画と言うのは人生の内でそうそう出会えるものではない、と思う。
この漫画「SHIORI EXPERIENCE」はバンド漫画なんだけれども
その中で、「BLACK BUS」という四人組のバンドが出てくる。

“SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん 12巻より”

ちなみにこのブラバス(BLACK BUS)は主人公ではない
漫画の中での扱いは脇役中の脇役
ほとんど出てきません
一応、主人公のバンドをどん底に突き落とし、その後も、ある重要な一枠を争う強敵として出てくるのですが、
ただの脇役じゃない!
ブラバスのメンバーひとりひとりにドラマがあるんですよ
僕は、もう泣いてしまいました
もう、これ漫画じゃないです。
自分は彼らのファンになってしまいました。
何度ブラバスの話だけ読み返した事か・・・

10年売れないバンド
焦り・・・絶望・・・
・・・そして、焦り・・・焦り

“SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん 12巻より”

ただ無駄に人生を消費していくという感覚
全てが、うまくいかない
長い間、苦楽を共にしたバンド仲間ですら
あっという間に関係が壊れてしまう

“SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん 12巻より”


でも諦められない

音楽の為に音楽以外を犠牲にしてきた

だから

自分には音楽しか武器が残ってないから
すがってしまう
苦しくて、泣くほどつらいのに諦められない

“SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん 12巻より”

「今日ですべてが終わるさ」

「今日ですべてが変わる」

「今日ですべてがむくわれる」

「今日ですべてが始まるさ」

この言葉が10年間、彼らを支えてきたのだろうけども
また、この言葉は呪いでもあったんだろう

報われない事なんてこの世には、いくらでもあるから

そして、報われなかった先なんて、虚しいだけだから

“SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん 12巻より”

でも、だからかなぁ
このブラバスを応援しちゃうんだよ

「今日ですべてが変わる」なんて
わたくし自身も何千回も心の中で思いましたよ。

泣きながら努力しても
何も変わらない毎日
周りに追い抜かされるだけ

惨めさを力に変えて、また泣きながら努力する

でも、いい結果なんてでない
つらい思いするだけで、今やってることなんて無意味なんじゃないか?なんて
ある日、思ってしまうんですよ

心なんてあっという間に擦り切れてしまう

自分だけが自分の夢を信じて走ってきたのに
その自分が
自分の可能性に信じられなくなってしまうんですよね

“SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん 12巻より”

でも、ブラバスは

もう駄目だ
もう無理なんだ・・・

って、絶望を感じながらも
心を擦切りながらも
また、立ち上がって走り出す様がカッコいいんすよ

“SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん 12巻より”

正に、この「BLACK BUS」
ロックです

現実と夢の葛藤
読んでると、共感する部分は多いと思います

だから、是非読んで

そういや、あらすじ

脇役のブラバスの説明だけで満足してしまいましたが、
勿論、主人公のバンドも激アツです

主人公は本田紫織
兄の残した莫大な借金の返済に追われる地味~な英語教師

“SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん 1巻より”

27歳の誕生日を迎えた日に、ある手違いにより
亡霊に憑りつかれ「27歳が終わる日までに音楽で伝説を残さなければ死ぬ」という呪いにかかるという憂き目にあう

しかし、この亡霊がやばかった
なんと、ギターの神様「ジミ・ヘンドリクス」だったのだ

これが、あらすじ
ジミヘンを知らない人はつまらそうな漫画だと思ってしまうとこですけど

ストーリーの進め方としては
王道のスポコン!
挫折と成長の繰り返し
立ちはだかる障害
そして増える仲間たち

ストーリー構成が素晴らしく
音楽に興味が無い人でも面白く読めます

“SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん 1巻より”



憑りつかれてる主人公の紫織先生もいいんですが
登場人物みんないいんすよ
ネタバレになるから言えませんが
それぞれに葛藤があって覚悟があって・・・それでドラマがある

個人的には主人公たちの軽音部と対立している
吹奏楽部(顧問と部長)のドラマが好きです

“SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん 9巻より”

物語の序盤ではかなり嫌な役なんですが
というかまあ、ストーリー上
主人公たちのポンコツ軽音部と対比する為に嫌な役になっている強豪校吹奏楽部なんですが

スポットを主人公たち軽音部から吹奏楽部に変えてしまうと
軽音楽部とまた違う哲学で葛藤している姿が見えてくるんです

“SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん 9巻より”

ドラマや漫画ではテンプレなんですが
どうしても、落ちこぼれがエリートに勝つっていうストーリーが

冷静になると気に入らない時があるです(たまにですよ?)

だって、人生をかけて努力してる量は
絶対的にエリートたちの方が多いわけですし

なぜ、真面目な奴がはみ出し者に毎回やられなければならないのかと

まあ、演出のせいなんですけどね

エリート側の葛藤って面白くなさそうですからね
共感も得にくいだろうし

でも、この漫画でエリート側で主人公たちと対立してる吹奏楽部側にスポットが当たると
そんなテンプレは間違ってた思わせてくれます

“SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん 9巻より”

作品途中、吹奏楽部(主に顧問と部長)にスポットが当たってるときは
なんと主人公たちが悪役になっています

すばる先生という人が吹奏楽部の顧問で出てくるんですが

自分の完璧な吹奏楽部の演奏を邪魔され
挙句の果てに主人公たちの身勝手なエゴの為に
自分の大事な部員が苦しむ
音楽感の違い、哲学の違い
対立する夢と夢

“SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん 10巻より”

最初は悪役だったすばる先生なんですが、
物語が進むにつれて、憎めなくなってきますよ

でも、ストーリーのメリハリが損なわれることなく
主人公の紫織が完全に悪役をやりきってくれます

真面目で地味な紫織が、どう悪役をやりきるか
そして悪役やりきった果てにどんな結末があるのか
是非、その目で確かめていただきたい‼

あ、あと、あと
カート・コバーンの話も秀逸です

そうなんすよ
カートも出てくるんすよ!この漫画

実は、ジミヘンよりカート・コバーンのほうが好きなので嬉しいかぎり

個人的にはカートが好きで、
自分のギターはモズライトのギターを愛用してるんで

あ、どうでもいいですね・・・・

もっと、カート・コバーン出てこないかなぁ・・・

ああ、語りつくせねぇ・・・
というか、メインの登場人物
ほとんど紹介してねぇ・・・

ジャンル・・・・魂のブルースを呼び起こす漫画
おすすめ層・・・ロック大好き世代
出版社・・・・・スクウェア・エニックス
連載雑誌・・・・月刊ビッグガンガン

補足説明

キャラクターはみんなストーリーがあって魅力的
でも、多分 これからもっと過去の偉人も増えてくるだろうけど
その都度、賛否両論はありそう。
実在の人物を漫画に落とし込むのはどうしても漫画家さん主観が強くなるので難しいだろうけども・・・頑張ってほしい

ストーリーは起承転結がしっかりしてる
回想の挟み方もタイミングがいいし
場面切り替えも上手いと思います
全体のストーリーも決まってるし、ぶれることは無いだろうけど
逆にそれが飽きとなり読者離れを起こしそうな気はする

基礎画力は問題なし
360°どの角度からでもかける漫画家さんだと思う

漫画絵の完成度は完全に固定してます
今後崩れることも、変化することも無いと思います
見てて安心はあります
でも、絵の感じ自体は少し教科書通りというか、
上手くてもつまらなさは感じるかも
それゆえに、絵による読まず嫌いは案外いるのでは?と思う

演出力、基本的にこれも教科書通りという感じ
古臭い感じはするかも
音をイラストにするのは、大変な事なんだろうけど
どうしても、絵を通しての音の想像は
読者の音楽に対する引き出しの多さが無いとついてこれないかも・・・
例えば、ロックにサックスを混ぜるとか
想像できない人は漫画の表現だけでは、無理だと思う
それに、どうしても演奏シーンの演出はワンパターン化してるのも、物足りないところ

構成力は登場人物増えすぎちゃって、立ち回りが難しくなってる感じ
一人にスポットを当てれば、他は消えるわけだし
同時進行で物語が進んでるところもあるし
最後、綺麗にまとめられるかは見どころではあるが、不安もある
基本的に偉人達を漫画に登場させた時点で
今後、落ち着いていく構成はあり得ないわけだし、とりあえずやり切って欲しいと願うばかり

セリフは共感できるセリフ回しが多いし、感情移入がしやすい
ぐっと来るセリフも多い

オリジナリティーはやっぱりテンプレ通り、教科書通りという印象
勿論、期待を裏切らないから絶対に面白いし
日本人はテンプレ通りが大好きだから間違いは無いのだけれども
ストーリーの先読みはされるだろうな、という感じ
今後、いい意味で読者は裏切られることはあるのか期待

面白さは一回読めば、ハマる
読む前は敷居の高さを感じさせて、読みにくさがあるとは思う
でも、外れ無し面白さがココにある

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